私の開発案件:その1 鋼製小物の個体認識

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

2017年1月23日(月)

皆様、新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞ宜しくお願い申しあげます。
昨年末、新年に向けて書類の整理をしていました所、「ヘルスケアビジネスは無限(2005年7月)」と題した小文を見付けました。社会構造、経済構造、疾病構造などの変化に応えて、ヘルスケアビジネスが今後どのように展開してゆくべきなのか書いたものです。この中で、消費者の目から見てどのような技術とビジネスモデルの開発が求められているのか、具体的に例示しています。それから11年半経った現在、どこまで開発が進んでいるのか、調べてみました。今回は「鋼製小物の個体認識」についてです。

鋼製小物の個体認識:手術準備の合理化、自動化

メス、ハサミ、鉗子等手術において使われるステンレス製の道具を「鋼製小物」と呼びます。病院の手術室においては日常的に数多くの鋼製小物が使われていて、使用後は洗浄・乾燥、収納され、次の手術時に必要なものを揃えて滅菌の上で使用されます。このサイクルを繰り返し、使われて行くのですが、一つ一つの鋼製小物を認識したうえで、その一生を管理する手段がありません。
もし一つ一つの鋼製小物を認識することが出来れば、例えばこのメスは50回使用したら砥ぎに出す、廃棄するなどのルールを定め管理することが出来ます。こうすれば執刀医の負担が減る事はもちろん、鋼製小物全体の在庫量を減らして合理的な運営を図る事が出来、病院経営の健全化にも寄与できます。

解決策として、個体認識の技術である二次元バーコード(QRコード)が利用されたことがあります。鋼製小物のある部分にレーザーを用いて刻印を入れ、これを一つ一つ読み取る訳ですが、人手を介さないで読み取ることが出来ずに人的負担が残り、繰り返し利用する間に刻印部分が錆び付いてしまい、安全に対する不安を払拭できません。

現状、RFIDが次のエースと目されていますが、大きな問題を解決できないまま今に至っています。それは①金属の中にRFIDを埋め込んだ時に、読み取る事が出来るか。②オートクレーブ(蒸気滅菌器)の温度(最高135℃)に耐えられるか③小さい鋼製小物のどの部分に、どの程度の大きさのRFIDを埋め込めるか、そして読み取る事は可能か。
過去10年で①と②についてはほぼ解決しましたが、③について言えば、RFIDを小さくすればする程、読み取りができる距離が短くなって、結局人手を介さないと読み取れないという事で、実用的な装置は実現していません。

次に第3の方法として画像認識が浮上してきています。人混みの中で特定の人物を認識できるまでに画像認識技術は昨今大幅に向上してきています。この技術を鋼製小物の個体認識に利用すべく準備中です。複数の全く同じメスを一つ一つ分別して認識できるかどうかが最大の問題として残されています。実験を繰り返しながら可能性を追求していきたいと思っています。

小文「ヘルスケアビジネスは無限」には全部で7件の開発の可能性を取り上げています。
残りについては時を改めてお知らせさせて頂きます。
本年もどうぞご愛読の程お願い致します。

以上

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