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医工連携 私の視点

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾康二

Vol.31
H31.2.25
医療は予測の時代へ

先日NEC本社で開催された「NEC医療セミナー2019」に参加してきました。医療技術の開発という観点ではなく、病院経営に役立つ技術開発とその利用についての展示があり、この後に医師であり病院の経営に長けたお二人の方々からのお話がありました。

講演1「これからの医療の方向性を考える-AIとロボット時代を迎えて」
倉敷中央病院院長 山形専氏
講演2「ICTイノベーションで大学病院を変える」
聖マリアンナ医科大学 理事長 明石勝也氏

展示会においてはNECが永年開発し広く普及している電子カルテとその関連システムについて、どちらかというと商業的な展示が行われていました。病院内で発生する様々なデータを目的に応じて収集・処理・加工・表示するという形で情報の有効な流通と活用を目指しています。ここに少なからず物足りなさを感じながら見て回っていましたが、随所に興味ある動きがある事を知りました。

  • 退院時期の予測:退院時期の決定はクリティカルパスで決められると思われがちですが、主治医の意向や家庭の事情などで前後します。確定できない事によってベッド計画などに支障が生じているのが現状です。
  • 入院患者の誤嚥性肺炎発生の予測:容態の変化を事前に知って、その対応策を打てば患者のQOLも向上し、現場の負担も軽減されます。

集積されたデータとAIの活用によって「予測」という行為が現実性を帯びてきています。 将来に起こる事を100%言い当てるのは無理ですが、何もしないままゼロ点でいるのではなく、ある程度の確率で(少なくとも50%、望ましくは70-80%の確率で)将来を予測して事前に対応策を打てることは素晴らしい事と私は思っています。

この後に山形先生のお話を聴きました。国民皆保険制度は制度疲労を起こしているのではないかとの問い掛けでした。「『病気になれば無料で治してもらえる』との意識が国民の中に蔓延している。本来健康は自分で守り育てるもので、日常的な健康診断を通して将来の自分の健康状態を知って事前に手を打ってゆく事が必要ではないか」との問い掛けでした。このためには「身体の状態の予測、健康状態の予知、そしてこれらの結果としての予防医療による対処が必要ではないか」とのお話でした。

確かに予測のための技術は未だ始まったばかりで実用に耐えないかもしれません。しかしここでこの波に乗って将来の可能性をつなぐ事も必要かと思っています。我々の医工連携活動の中でもこれに注目して予測技術を臨床の場にもたらす事ができればと思っています。

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