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医工連携 私の視点

横浜医工連携プロジェクト アドバイザー
森尾 康二

Vol.09
H29.4.25
開発のきっかけ:ニーズ、シーズ以外にも

昨年10月の本稿で「成果を出せる医工連携のために何が必要か」について書かせて頂きました。言うまでもなく医療技術開発のきっかけとなるのは、企業の持つ技術(シーズ)と臨床医の要望(ニーズ)である事には変わりはないのですが、最近遭遇したいくつかの事例を見ると、更に工学的知見(Engineering Findings)とも呼ぶべき第三極があるのではないかと感じています。殆どの開発においてシーズというのは加工と素材の技術であって工学の原理をベースにして、これまで世の中にはなかった現象を利用して、新しい医療機器を開発できる可能性があるのではと感じています。 その一つの例を次にお示ししたいと思います。

我々「横浜医療機器ビジネス研究会」のメンバーであるアネスト岩田(横浜市港北区)が、「EAコーティング」という新しいコーティング方法を開発しました。同社は古くからスプレーガンを用いた塗装技術の開発を続けてきましたが、これまでの技術は全て圧縮空気を用いて塗料を霧化して吹き付けるという点で同じ方式でした。今回同社が開発した「EAコーティング」は、“空気を使わずに静電気の力で塗料を対象物の表面に塗布する”という点で画期的な技術です。
その原理は次のとおりです。
マイナスに帯電したノズル内の塗料から静電気により引き出された液滴の中の揮発物が蒸散し、塗料粒子の表面積が減少することによって電荷密度が高まり、帯電限界に達するとこの液滴が爆発して更に小さい液滴になります。アースに接続された対象物に近づいていく過程で、空気中でこの爆発を繰り返す事で液滴径がますます小さくなり、最後に対象物表面に付着します。この高帯電液滴はノズルと対象物との間に発生する電界に沿って移動する為、発射された塗料はほぼ全て対象物上に付着。これにより①塗料の無駄がなく②対象物の凹みや狭窄部に入り込んで細部にまで塗布できるというものです。

EAコーティング(丸棒 軌道)

この新しい技術に基づく「EAコーティング」は、今後多くの産業分野で利用されていく事が期待されていますが、今のところ塗布量・塗布面積が小さい利用に限られています。医療機器・技術の場合ほとんどが細かい器具・装置であるため、「EAコーティング」の利用分野として最適と見られています。具体的な利用方法として、最初に頭に浮かぶのはステントへのコーティングです。ステントを加工できる医療機器メーカーが日本にも増えてきていて、より完璧なコーティング技術によってステントの品質向上に寄与できるものと期待しています。

工学的知見をベースにした医療技術開発は、これ以外にも散見されます。開発の一つの切り口として今後も注目していきたいと考えています。

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