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医工連携 私の視点

横浜医工連携推進アドバイザー
山越 淳

Vol.50
R2.10.30
AIと医療機器

以前、本コラムでAIを用いた診断装置が米国において承認されたことを御紹介しましたが、その後、日本でもAIを用いた医療機器がいくつか承認されています。

エムスリーとアリババクラウド AI医療技術「COVID-19肺炎画像解析プログラム Ali-M3」医療機器製造販売の承認取得・提供開始(2020年6月29日付 エムスリー株式会社 プレスリリース)

AIを搭載した内視鏡画像診断支援ソフトウェア「EndoBRAIN-EYE」を発売(2020年3月2日付 オリンパス ニュースリリース)

今回は、AIを用いた医療機器について医薬品医療機器等法、及び知財の観点からお話をしてみたいと思います。

1.AIを用いた医療機器

医療分野は、AIを利用するのに適した分野であると言われています。これは、診断画像など患者に関する様々なデータが利用可能であると共に、治療や診断の結果が明確であることが多いためであると言われています。このAIを用いた医療機器では、臨床データに基づく学習済モデルが利用されると考えられます。なお、臨床使用開始後も継続的に学習が行われ、更に精度が向上するような医療機器は、現行制度の枠組みを超えるものであり、承認の観点からは様々な制度上の課題があると言われています。これは、現行制度では、承認された医療機器の性能等が変更される場合には、事前に変更に関する申請を行って承認を得なければならないところ、利用に伴って性能が継続的にその精度が向上(変化)する場合には、その変更に伴う申請を事前に行うことができず、更には、同一の装置であるにも関わらず装置の性能等が使用されるサイト毎に異なることなどが想定されるためであると言われています。一方、昨年改正された医薬品利用機器等法において、条件付き承認制度や変更計画確認手続制度といった新たな制度も導入されており、また医療分野におけるAIの技術の有用性について関心も高まっていることから、将来的には、そのような特性にあった新たな制度も導入されるのではないかと予想されます。

2.AIを用いた医用機器の特許

日本の特許法では、プログラムも発明の対象であることが明らかにされています。そして、特許庁の審査基準において、AIの発明はプログラムの発明として審査が行われることが明らかにされています。即ち、AIを用いたシステムであっても、特許の対象として認められ、特許要件を満たせば特許を取得することが可能です。ただし、AIの場合、情報を入力すれば、何らかの出力が得られるため、教師データに含まれるデータの相関関係が明らかにされていることが特許を取得するための要件の一つになると言われています。この相関関係は、実際の性能評価の結果を用いて直接的に示される他、技術常識からそのような相関関係があると推認できれば良いとされています。例えば、生産者の顔画像と、その人が罹患した病気の情報を教師データにして作成した学習済モデルを用いて、人物の顔画像から罹患する可能性のある病気の種類を推定するAIに関する発明があったとします。現在の技術常識では、人物の顔画像と病気の種類との間に相関関係等が存在することは推認できるとは言えないため、実際に作成した人工知能モデルの性能評価結果による裏付けがない限り、そのような発明を出願しても特許を受けることができないと考えられます。一方、その裏付けとなる性能評価の結果が提示できたり、あるいはそのような相関関係があると推認できる病気に限定したりした場合には、他の要件を満たすことで特許を受けることができ可能性があるとも言えます。

3.まとめ

AIを用いた医療機器は、その有用性が期待される一方、以前本コラムにてご紹介したような医師法との関係など、将来的な課題も指摘されています。一方、その進展のスピードは速く、今後益々発展していくことが予想されています。
今後も引き続き注視をすると共に、新たな情報があった場合には、御紹介をしていきたいと思います。

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